2. 薬物検査の目的と範囲
薬物検査の主たる目的は、「職場(学校)から違法薬物の追放による安全・安心な労働・学習環境の整備」です
(1)薬物検査を適切に行うことで得られる成果
- 1. 職場や学校に居る薬物乱用者を特定することができます
- 2. 薬物乱用者の雇用や入学などのリスクが回避されます
- 3. 薬物への好奇心や誘惑を思い留めさせる「牽制効果」が期待されます
(2)薬物検査の在り方
薬物検査は、薬物教育と薬物依存の治療を含む復帰プログラムとセットで提供されるべきです。
(3)検査対象者の範囲
自社の事業継続・発展のために、薬物検査は、誰に、どのような検査をするのか、線引が必要です
厚生労働省は、『労働者の個人情報保護に関する行動指針』で、「薬物検査は特別な職業上の必要性」を求めています。
ということは、特別な職業上の必要性が無い場合、検査をする必要が無いと言っています。
例えば老人介護施設の場合、バスや電車で通勤する介護職の従業員は特にリスクを伴う職種という訳ではありませんので、検査をする必要性は低いと判断されますが、同じ施設で「通所される患者さんを車で送迎する従業員」は、駅前の繁華街や小学校の通学路を走行することも多く、他人や搭乗者を交通事故に巻き込んだり、また自らも交通事故の被害に遭うリスクがありますので、「特別な職業上の必要性」があると考えられます。
一般的なマルチタイプ(6~10種類程度の薬物を検出する)スクリーニング検査では、ヘロインやコカイン、大麻、覚せい剤等の他にベンゾジアゼピンなどの抗精神薬類も検出しますので、睡眠薬や抗不安薬、抗うつ薬、抗てんかん薬等の処方薬の服用者も検出します。
原子力や武器などを扱う職種、飛行機や列車、大型車を操縦するなどの大きなリスクを伴う職種においては、幅広く薬物を検査する必要がありますが、そうでない職種の従業員はそのような検査は必要がないと思われます。
なお、日本の社会・企業風土として、特定部門だけ薬物検査が厳重だといった誤解がある中で検査を実施すると「不公平感」「不平不満」ひいては「被害者意識」が生まれ、職場の雰囲気がギスギスして悪くなる場合があります。
初期の検査導入時に、職種ごとに検査の頻度や検出薬物の種類、コストや手間が異なる等の情報を正しく伝えることで、この問題の発生を避けるためのひと工夫が大切です。