3.薬物検査が必要な職業
(1)薬物検査を求める日本の法律
日本には2024年時点で法的に薬物検査を義務付けられた職業や、対象者は存在しません。
ただし以下の約30種類の職業においては免状交付、または就業開始までに、医師による「麻薬等の中毒者ではない」ことを証明する診断書の提出が一度だけ義務付けられています。
なお、これらの職種は「麻薬等の中毒者ではない」ことを担保するため、継続的な検査を受けるよう法改正される可能性があります。
日本で「麻薬、あへん、大麻及び覚せい剤の中毒者ではない」診断書が法で規定されている職業
- 銃砲刀剣類所持者
- 射撃場の設置者や管理者
- 狩猟者
- 医師
- 歯科医師
- 保健師
- 助産師
- 看護師・准看護師
- 臨床検査技師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 視能訓練士
- 薬剤師
- 歯科技工士
- 歯科衛生士
- 臨床工学技士
- 獣医師
- 家畜人工授精師
- 駐車監視員
- 警備員
- 救急救命士
- 調理師
- 製菓衛生師
- ふぐ調理師
- 美容師
- 理容師
- 義肢装具士
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師
(2)社内薬物検査に対する厚生労働省の見解
厚生労働省は、『労働者の個人情報保護に関する行動指針』において、「使用者は、労働者に対するアルコール検査及び薬物検査について、原則として、特別な職業上の必要性があって、本人の明確な同意を得て行う場合を除き、行ってはならない。」と明記しています。
そのため、企業は社内で薬物検査を行うにあたり、下記の要件を遵守しなければなりません。
- ① 特別な職業上の必要性
- ② 本人の明確な同意
(3)危険を伴う・高度な判断力を必要とする職種
「特別な職業上の必要性」の要件に該当すると思われる例として- 1. 武器を使用する、陸・海・空の自衛隊、海上保安庁、警察官
- 2.「不祥事が社会に与える影響が大きい職種」:国会議員・国家・地方全ての公務員、国と契約している企業の社員(みなし公務員)
- 3.「顧客の安全確保が責務となっている業種」:航空機・船舶・鉄道・バス・大型トラック等を運行する運輸事業者・電気・ガス・水道等インフラ事業者
- 4.「重大な事故・災害の恐れがある業種」:原子力関連施設、化学コンビナート、軍需産業
- 5.「社会的影響力の大きい業種」:公営ギャンブル運営者、プロスポーツ団体・関係者、芸能・興行界
- 6.「Drug Scandal を起こしてはいけない業種」:医師、大学生・専門学校生及び学校職員
(4) 米国の例(参考)
◇ 米国「薬物のない連邦職場法」1986年
全ての政府組織(中央・地方政府・軍隊を含む)の職員及び政府と契約している企業の従業員(みなし公務員)を対象。
Executive Order 12564- Drug-free Federal workplace 1986
◇ 米国運輸省規則:DOT U.S. Department of Transportation 1991年
「沿岸警備隊・航空・鉄道・港湾・高速道路・パイプラインを含む運輸省傘下の組織」が対象
- 航空管制官
- 航空機運行管理者
- 航空会社の乗務員
- 航空会社のパイロット
- 列車司令員
- 鉄道操縦者
- 車掌
- 列車信号員
- 運航管理責任者
- パイプライン/コンビナート:危険物緊急対応要員
- 製鉄/石油精製/重工業/造船:危険物保守作業員
- 空港/港湾管理者:オペレーター
- 高速道路保守/緊急サービスオペレーター
- 警備員・大型バス運転手
- 商用トラック(総重量:トン以上)運転手
- 重機オペレーター
Omnibus Transportation Employee Testing Act of 1991