5. 事前に準備・整備する事項
法律の整備が不十分な日本の職場で薬物検査を導入するには、プライバシーや基本的人権に配慮することと、入念な事前準備などが必要です。
下記に整備すべきポイントを挙げましたので弁護士、社会保険労務士、医師などの専門家との協議にご活用ください。
(1)アルコールと乱用薬物の追放宣言「Alcohol & Drug Policy」
職場からアルコールと乱用薬物を追放することを文書で宣言します。
組織の最高責任者「役所であれば長官、企業であれば代表取締役、学校法人であれば 理事長」から全職員や学生に対し「薬物類等に関する組織の基本的な考え」を明確なメッセージとして発信することからスタートします。
〇職場の Alcohol & Drug Policy の作り方
下記のLINKにサンプルが掲載してありますのでこちらを参考にしてください。
(2) 就業規則・雇用契約書等に必要な規定等
※参考例です、詳細は弁護士と相談してください
就業規則・雇用契約書
- a. 社員(学生)は会社(学校)が行う 薬物教育プログラムを受講しなければならない。
薬物教育:オンライン方式による「eラーニング」の導入 - b. 社員(学生)は Alcohol & Drug Policy に基づく検体の提供並びに薬物検査の実施に同意します。
- c. 薬物検査は、「① 一次(スクリーニング)検査」及び「② 確認検査(①が「陽性」の場合)」を受けることに同意します。
- d. ①の前に「検査担当医療機関名・相談窓口」を被検者に通知、医師との相談内容は個人秘密として保護されます。
- e. 事前に指定医療機関宛に「問診票」、処方薬を服用している方は「お薬手帳」を提出。 偽陽性(偽の反応)を予防します。
- f. ②「確認検査」で陽性の場合、医師による検査結果の確認後、警察または厚生省麻薬取締部へ事実関係を通報します。
- g. 上記の場合、会社(学校)は「薬物依存症」の治療施設による適切な治療、リハビリを命ずることがあります。
(3)被検査者名簿とローテーション表の作成
- 1. 薬物検査は、部署内で均等に実施されるよう順番や回数を公平に振り分け、不平やトラブルを予防します。
(4)操縦・運転等の危険を伴う業務に従事(または禁止)するための資格規定
※参考例です、詳細は弁護士と相談してください
参考情報:「自動車の乗務等を停止する法的根拠について」
運転免許の拒否等を受ける病気
- アルコール・麻薬・大麻・アヘン・覚せい剤の中毒
- 幻覚症状を伴う精神病
- 統合失調症
- てんかん
- 再発性失神
- 無自覚の低血糖症
- 躁うつ病
- 重度の睡眠障害
- 認知症
警察庁:運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について
(5)雇用前薬物検査規定
- ・応募者に対し 「雇用前薬物検査を実施し、陽性反応者は採用しない」 方針を明記した文書を事前に交付します
- ・雇用前検査ですので就業規則・雇用契約書の修正だけで即日導入が可能なうえ、予防措置としての効果が期待できます
(6)労働組合との協定
労働省発表の「労働者の個人情報保護に関する研究会報告書」をもとに、弁護士、社会保険労務士などの専門家とご相談ください。
(7)検査実施組織 の立ち上げ (例)
- 「安全で安心な職場環境の整備本部」(仮称):本部長 代表取締役/CEO
- 職場の薬物検査実行委員長:コンプライアンス/労組 担当役員
- 検査責任者:総務部長
- 情報管理責任者
- 会場設営/運営/検体管理担当者
- 検査名簿作成/管理担当者
- 連絡・調整(医師・所轄署・確認検査機関等)担当者