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薬物関連資料

薬物乱用と事故・事件

2020年5月20日 警察の職質から逃走し、女性をひき逃げ(死亡)

東京都大田区で警察の職質から逃走し、大田区南馬込の第二京浜で歩行者の女性をひき逃げ(死亡)した。

事故後その場に車を放置し、付近のマンションに逃げ込み、10階まで上がり、そこで身柄を確保された。

事故を起こしたベンツを運転していたのは、NM容疑者31歳 飲食店従業員。事故当時「薬を飲みすぎて記憶がない」と供述。
また、尿鑑定で違法薬物の使用が疑われる結果が出たことに加え、職務質問が行われた現場近くから注射器が見つかっている。

2018年10月25日 脱線事故の運転士に薬物の摘発歴、現在も治療中

台湾北東部で18人が死亡した台湾鉄道(台鉄)の特急脱線事故で、行政院(内閣に相当)のグラス・ユダカ報道官は25日の記者会見で、運転士に薬物使用の摘発歴があることを明らかにした。報道官によると、運転士は昨年12月、台北市内で覚醒剤0.6グラムを所持しているところを摘発され、使用も認めたという。台北地方検察署は初犯であることなどから今年2月、2年間の起訴猶予処分とした。

事故当時も治療期間中だったが、直近2カ月の検査で薬物は検出されていないという。事故後の検査結果は現時点で出ていない。 台鉄は報道されるまで「知らなかった」としている。

産経新聞

2015年6月19日 自動車大手 期待の女性役員「逮捕」の衝撃

ダイバーシティの促進が目的だったが・・・

大手自動車メーカーの役員JH氏は、6月18日、麻薬及び向精神薬取締法違反(輸入)容疑で逮捕された。
6月8日に米国から発送され、11日に成田空港に到着した国際郵便で麻薬成分「オキシコドン」を含む錠剤を密輸した疑いがもたれている。
警視庁によると、JH容疑者は「麻薬を輸入したと思っていません」と容疑を否定している。

許可無く、国際郵便を利用

厚生労働省の監視指導・麻薬対策課によると、オキシコドンは麻薬指定を受けており、モルヒネなどと同様に医師の処方のもとで、がん患者の鎮痛薬などに使用される。国際条約でも麻薬に指定されている。

米国でも医師の処方が必要だが、日本より痛み止めとして一般的だという。

日本では免許を取った事業者以外は輸入できない。 例外として服用している本人が診断書を添えて許可を得れば、携帯でのみ国内への持ち込みが許される。 しかし今回は、国際郵便で許可も得ていなかった。

ハーム・リダクション(Harm reduction)とゼロ・トレランス(Zero-tolerance policing)

海外の薬物状況を研究すると Harm reductionという言葉に出会います。直訳すれば 「害 (Harm) の低減 (reduction) 」となります。

その意味は、個人が健康被害や危険をもたらす行動習慣(合法・違法を問わない)をただちにやめることができないとき(主に嗜癖・依存症を指す)

その行動に伴う害や危険をできるかぎり少なくすることを目的としてとられる公衆衛生上の実践、指針、政策を指します。

米国における2021年の薬物関連死は約100,000人(推定)に達したそうです。なかでもFentanyl (大型獣の麻酔にも使われる強烈且つ安価な合成麻薬) が混ぜられたコカインやヘロインを使用して死亡する事件が多発しています。 そのため、SAMHSA(米国薬物乱用精神保健管理局)は、コカイン・ヘロインの常習者にFentanyl検査キットを使用するよう注意喚起しています。 また、一方では薬物依存症患者に対し、ヘロインからケタミンへ、コカインから大麻へと、毒性の低い薬物への転換を推奨しています。

米国の半分近い州政府は、医療用マリファナと娯楽用マリファナの販売を合法化し、取締り予算の削減と税収増に舵を切りました。

ヨーロッパでも違法薬物使用が社会に拡散しております。そのために、政府は違法性薬物使用を認めないまでも、個人使用する現状がある以上、注射器の回し打ちなどによるHIV感染の拡大防止を優先し、害を最小限にした使用(ハーム・リダクション・アプローチ)を受けいれるという現実対応的施策を導入しています。 

薬物汚染の少ない日本では、今のところ「ダメ、絶対」(薬物乱用防止標語)というゼロ・トレランス・アプローチをとっています。

薬物の生産や密輸、密売等、サプライサイドの制圧には「ダメ、絶対」と厳しく取り締まることが重要なことは論を俟ちませんが、果たしてそれだけで大丈夫でしょうか。 私たちは米国法を参考に「日本版 薬物の無い職場」を目指して、職場や学校における乱用薬物スクリーニング検査を定着させることが最も必要ではないかと考えております。

米国の大麻ショップ 視察レポート

LAの大麻ショップ-A店 フリーウエイ沿いの郊外型店舗

LAの大麻ショップ-B店 ダウンタウンの店舗

職場の薬物検査トラブル

力士解雇問題の残したもの

2010年4月、東京地方裁判所である民事事件の判決が宣告されました。

・ 原告は2人のロシア人力士。
・ 被告は日本相撲協会

大麻使用を理由として解雇を言い渡された力士らが、協会のした解雇処分の無効を訴えて起こした地位確認請求事件の判決です。 


原告の主張には、本件解雇が、杜撰な簡易検査手続を前提とすること、不利益告知がなく、I親方の解雇にしない旨の発言により提出された尿の精密検査結果が根拠であること、原告らにロシア語通訳を付した弁明機会を与えていないことなどが含まれていました。

この部分に関して判決は

1. 本件簡易検査には、不受検者が一名いたこと

2. 不受検者の取扱いや陽性の結果が出た場合にどうするのか等について、事前に決まっていたわけではなかったこと

3. 検査実施前に、I親方が、K理事長に対し、陽性反応が出た場合は師匠と本人のみに告げると報告していたのに公表されたこと

4. 原告ら以外の本件簡易検査結果は写真撮影されていないこと等の事実が認められる

5. これらから、原告らが被告に対して不信感を抱いたという事情は認められる

しかし、仮に、「本件簡易検査に杜撰の謗りを受け得るとしても…引き続く本件精密検査によって、原告らが大麻を使 用したことは明らかなのであり…これらの事実によって、本件解雇を無効とするような違法が本件簡易検査手続にあるということはできない。」として、原告の請求を退けました(平成22年4月19日東京地方裁判所判決)。

薬物検査の1事例として、これを取り上げてみたいと思います。(小森弁護士)
皆さんもご記憶のことでしょうが、力士たちの薬物検査をめぐって続出した不手際の数々は、薬物検査に対してきわめて悪い印象を残してしまいました。もし陽性反応が示された場合には相応の不利益処分を伴うような薬物検査を行うにしては、その体制があまりにも杜撰だったといえるでしょう。

上記の判決は、簡易検査において
  • ① 不受検者の取扱いや陽性結果が出た場合の対応等について事前に決まっていなかった
  • ② 簡易検査の結果が公表されたこと(個人情報)
  • ③ 原告ら以外の本件簡易検査結果は写真撮影されていない
などを指摘していますが、そのほかに
  • ④ 簡易検査と精密検査の位置づけが事前に明確にされていなかった
  • ⑤ 採取したサンプルの保管や記録の体制がまったくできていなかった
  • ⑥ 検査に関与する人と役割が決まっていなかった
  • ⑦ 検査記録の管理体制がなかった
  • ⑧ 検査結果の判定責任者が決まっていなかった

などなど

……この例では、薬物検査「べからず」集のあらゆるパターンが出揃っているといっても過言ではないでしょう。

しかし、協会の認識が甘かったと責める資格が、果たして私たちにあるでしょうか。そもそも、薬物検査に消極的だった日本では、職場での薬物検査に関する指針も、資料も、ほとんど提供されていないのです。職場における薬物検査とは何か、そこでやるべきこと、やってはいけないことも明らかになっていない状態で、実に危なっかしい手探りで、検査が導入され始めているのです。まず必要なのは、正確な情報だと思います。

小森弁護士ブログ「職場の薬物検査2」(2011年08月06日)

企業と薬物検査に関する過去の事例

1. 大阪市交通局

2009年に大阪市交通局の地下鉄運転士が覚せい剤使用で逮捕、有罪判決を受けた事件を受け、同局が地下鉄・バスの運行業務にかかわる全職員3,830人を対象に、薬物検査を抜き打ちで実施しようとしたところ、9人が検査を拒否したことがありました。

2年後、2011年に職員の同意を得て検査実施。1名検査拒否、2名の薬物使用が見つかった。

大阪市交通局の発表 平成23年(2011)9月9日

大阪市交通局は、平成23年8月に当局職員が覚せい剤取締法(使用)違反で逮捕・起訴されたことを極めて重大な問題であると重く受け止め、市営地下鉄・バスの全乗務員を対象に専門の検査機関による薬物検査を実施しました。

【薬物検査の実施結果】

対象者
2,837名(長期欠勤者の38名を除く)
地下鉄及びバスの全乗務員
検査方法
専門検査機関による採尿の成分分析
検査結果
対象者2,837名のうち2名から陽性反応を検出。検査の同意を得られなかった1名を除く。
陽性2名の詳細
職員 検出薬物 職種 年齢
A アンフェタミン・メタンフェタミン
(ともに覚せい剤)
高速運転士 40歳
B THCカルボン酸体
(大麻・マリファナ)
高速運転士 38歳

2. JR北海道

2013年にJR北海道の運転士が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されたことを契機に、国土交通省北海道運輸局がJR北海道に対し抜本的再発防止として「全運転士(約1,100人)に対する薬物検査実施を提案し、これをJR北海道が拒否したことがありました。

当時、こうした、JR北海道の対応に対しては、社内体質の改善に積極的でないと、批判的な論調が目につきました。

薬物依存症の相談窓口

厚生労働省 小冊子「ご家族の薬物問題でお困りの方へ


警視庁パンフレット「薬物問題でお悩みの方へ」もあわせてご覧ください。